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試合前のメンタル・フィジカルルーティン

試合前になると、緊張で体が硬くなったり、集中しようとしても思考が空回りしたりする選手は少なくありません。一方で、いつも安定したパフォーマンスを発揮できる選手は、決して“緊張しない”のではなく、自分の状態を整えるルーティンを持っているのです。

近年、トップアスリートたちは「試合前ルーティン(pre-game routine)」を非常に重視しています。

しかし、それを“真似するだけ”では意味がありません。大切なのは、自分に合ったルーティンを自律的に設計・管理できることです。本記事では、育成年代の選手が「自分で整える力」を身につけるための考え方と方法を紹介します。

試合前のメンタル・フィジカルルーティン

1. 「ルーティン」は心と体をリンクさせる“スイッチ”

ルーティンとは、ただの習慣ではありません。それは「集中モードに入るためのスイッチ」であり、試合という非日常に向けて“心と体を最適化する手順”のことです。

たとえば、イチロー選手は打席前に必ず同じ動作を繰り返していました。これは単なる癖ではなく、「いつも通りの自分」を取り戻す心理的な装置だったのです。

ルーティンがあることで、選手は「何をすれば落ち着くか」「どうすれば集中できるか」を自覚し、外部の状況(観客・相手・結果)に振り回されず、自分のペースを保つことができます。

2. 試合前の“3段階ルーティン”設計

ルーティンを作る際には、時間軸で分けて考えるのが効果的です。一般的に、以下の3段階で整理すると管理しやすくなります。

【① 前日:準備とリカバリーの段階】

試合前日は、無理に練習量を増やすのではなく、体と心を整える日にすることがポイントです。

睡眠時間を確保し、夜更かしを避ける
炭水化物中心の食事でエネルギーを蓄える
翌日のイメージトレーニングを数分行う
持ち物やユニフォームの確認を早めに済ませておく

この「準備が整っている」という安心感が、翌日の安定した集中力を支えます。

【② 試合当日(会場到着まで):心拍を整える段階】

試合当日は、移動中からすでに“試合モード”が始まっています。気持ちを整えるためには、呼吸と姿勢が重要です。

・深呼吸を3回行い、心拍数を安定させる
・背筋を伸ばし、ゆっくり歩くことで余裕を演出する
・音楽を聴く、メモを読むなど、自分を落ち着かせる行動をルーティン化する

また、試合へのイメージトレーニングを行う場合は、「ミスをしない姿」よりも「理想のプレーを自然に行っている自分」を描くことが効果的です。脳は現実と想像を区別しないため、ポジティブなイメージが自信の土台になります。

【③ ウォーミングアップ直前~試合直前:集中を高める段階】

ここでのポイントは、「考えすぎない状態」をつくることです。

自分の決まったストレッチやアップメニューを順序通り行う
チームメイトと軽く声をかけ合い、ポジティブな雰囲気をつくる

「よし、やるだけだ」という短いセルフトークを使う

試合直前に複雑な戦術やリスクを考えすぎると、脳が緊張モードに入り、動作が硬くなります。むしろ、「体を信じる」「積み重ねてきたことを出す」といった“信頼の言葉”を自分にかける方が、脳のパフォーマンスを最大限に引き出します。

3. メンタル面の自己管理――「感情の波」を可視化する

ルーティンを定着させるには、感情の状態を自覚する力が必要です。選手の中には、「なぜ今日は調子が良くないのか分からない」と感じる人も多いですが、それは“自分を観察する習慣”がないからです。

おすすめなのは、「プレー日誌」の導入です。試合や練習の前後に、以下の3つを短く書き出します。

今日の体調(1~5点)
気分・集中度(1~5点)
結果と感じた課題

これを続けることで、「睡眠が短い日は集中力が下がる」「音楽を聴いた日は落ち着く」など、自分の状態を客観的に把握できるようになります。データがたまるほど、“自分だけのルーティン設計図”ができあがっていくのです。

4. 指導者の役割――「整える力」を奪わない

ルーティンを選手が自律的に持つためには、指導者の関わり方も重要です。ありがちなのが、コーチが「このルーティンをやりなさい」と一方的に決めてしまうケースです。

それでは、選手の“自分で整える力”は育ちません。指導者ができるのは、選手自身に考えさせる問いを投げることです。

「どんな時に落ち着いてプレーできる?」

「試合前にやると安心できることはある?」

「理想の状態を10点満点で表すと、今は何点?」

こうした質問を通して、選手が自分なりの方法を発見していくことが理想です。コーチはそのプロセスを見守り、必要に応じて軌道修正する“伴走者”であるべきです。

5. 自律的ルーティンが生む“本番力”

試合当日は、予期せぬトラブルや環境変化がつきものです。ルーティンを自分で管理できる選手は、そうした変化にも強くなります。

ルーティンとは、「結果を操る手段」ではなく、「自分を整える土台」です。たとえミスをしても、焦らずリセットできる。そうした“本番力”を持つ選手は、長期的に見ても伸び続けていきます。

試合前のメンタル・フィジカルルーティン | まとめ

育成年代で身につけたいのは、技術や戦術だけではありません。自分の心と体を整えるセルフマネジメント能力です。

試合前のルーティンは、その第一歩です。決まった手順の中に安心感を見出し、自分の力を最大限に発揮できる準備を自ら行う。その積み重ねが、将来どんな舞台でもブレない選手を育てます。

“勝つための準備”ではなく、“自分を整える準備”。その意識こそが、最も強い選手をつくるのです。

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