【指導者必見】“叱る”と“怒る”の違いとは

スポーツ指導の現場では、選手のミスや不適切な態度に直面する場面が少なくありません。
そんなとき、指導者が感情的になってしまい、「怒ってしまった」経験はないでしょうか?
しかし、「叱る」と「怒る」はまったく異なる行為です。感情をぶつける「怒り」は信頼関係を壊しますが、的確な「叱り」は選手を成長させ、指導者としての信頼を築く行為でもあります。
今回は、“叱る”と“怒る”の違い、そして指導者として身につけておきたい効果的なフィードバック技術について考えていきます。
「叱る」と「怒る」の本質的な違い
まずは、「叱る」と「怒る」の違いを明確にしておきましょう。
「叱る」は、相手の成長を目的とした行動です。選手の行動や態度に問題があるとき、その改善を促すために冷静かつ建設的に伝える行為です。
そこには「選手を良くしたい」「より高いレベルに導きたい」という前向きな意図があります。
一方で、「怒る」は、指導者自身の感情を吐き出す行為です。「イライラする」「失望した」「思い通りにいかない」という自身の感情に任せて相手を非難したり、責めたりすることで、相手には恐怖や不信感だけが残ってしまいます。
例えば、選手が試合中に戦術と異なる行動を取った場面を想像してみてください。
●「なんでお前はいつもそうなんだ!ちゃんと考えて動けよ!」(怒る)
●「さっきの場面、チームとしてどう動くべきだったか覚えてる?なぜ逆の行動をしたのか考えてみよう」(叱る)
この2つには、選手への伝わり方に大きな違いがあります。
前者は選手の人格を否定し、後者は行動に焦点を当てて改善を促しています。
なぜ“怒る”ことが逆効果になるのか?
スポーツ現場では、「厳しさこそが成長につながる」という信念が根強く残っています。しかし、怒りによる指導は、一時的な抑止力にはなっても、選手の内発的なモチベーションを育むことはできません。
特に最近の若い世代は、「なぜそうするのか」を納得して動く傾向が強くなってきています。一方的な怒りにさらされると、選手は「理不尽だ」「自分は否定された」と感じ、指導者への信頼を失ってしまうのです。
指導者の言葉に耳を傾けなくなり、内心では距離を取ろうとするようになります。
さらに、怒りの頻度が高くなると、選手は「どうせまた怒られる」と委縮し、プレーの自由度が減り、本来のパフォーマンスが発揮できなくなります。「ミス=怒られる」では、チャレンジを避け、無難なプレーしか選択できなくなるのです。
信頼を失わない伝え方、叱るためのフィードバック技術
指導者として、「叱る」力を高めるためには、効果的なフィードバック技術を身につけることが大切です。
以下の3つのポイントを意識することで、選手との信頼関係を損なわずに成長を促す指導が可能になります。
1. 行動に焦点を当て、人格を否定しない
叱るときには、問題となった「行動」にフォーカスをあてましょう。「お前はダメだ」と人格を否定するのではなく、「このプレーの意図は?」「次はどう改善できるか?」といった対話型の問いかけが有効です。
フィードバックは、“あなた”ではなく“行動”に対して向ける。「君の判断が間違っていた」ではなく、「あの場面では、こういう選択肢もあったんじゃないか」と冷静に伝えましょう。
2. タイミングと場所に配慮する
人前で強く叱られると、選手は恥ずかしさや屈辱感を感じやすくなります。チーム全体の前ではなく、個別の場で静かに話すことが効果的です。また、熱くなっている試合直後より、落ち着いたタイミングでフィードバックする方が、選手の受け入れ度も高くなります。
「伝えるべき内容」以上に、「いつ・どこで・どう伝えるか」が、選手の心に届くかどうかを左右するのです。
3. ポジティブな要素とセットで伝える(サンドイッチ法)
叱る内容だけを一方的に伝えるのではなく、前後にポジティブなフィードバックを添える「サンドイッチ法」も効果的です。
たとえば、「今日はいい動きが多かったよ。ただ、後半の守備対応は少し甘かったね。そこだけ修正すれば、もっと良くなると思うよ」
といったように、良かった点→改善点→期待のメッセージ、という順で伝えることで、選手は前向きに受け止めやすくなります。
“叱る”と“怒る”の違いとは | まとめ
叱るという行為は、決してネガティブなものではありません。むしろ、選手の可能性を信じ、改善を期待しているからこそ伝えるものです。一方で、怒りをぶつけることは、選手との信頼関係を壊す“リスク行動”でもあります。
叱るときに必要なのは、「冷静さ」と「意図」です。「なぜそのプレーを修正してほしいのか」「どうすれば成長につながるのか」その理由を明確にしながら、選手の目線に立って伝えることが重要です。
それができる指導者こそ、選手にとって“本当に信頼できる存在”となるのです。
感情ではなく、愛情で叱る。それが、信頼を築くコーチングの第一歩です。