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思春期の選手が心を閉ざす理由

スポーツ現場で指導をしていると、小学生の頃は素直で何でも話してくれていた選手が、中学や高校に進学する頃から急に口数が減り、目を合わせなくなったり、指導者や親の言葉に反発するようになったりする場面に直面することがあります。
「最近あの子、全然話してくれない」
「注意すると反抗的な態度をとる」
こうした変化は指導者にとって大きな悩みのひとつです。

指導者に求められる接し方の変化

では、なぜ思春期の選手は心を閉ざしてしまうのでしょうか。そして、指導者はその時期にどのような接し方をすべきなのでしょうか。

1. 思春期に心を閉ざす理由

(1)自我の芽生えと独立心の高まり

思春期は「子ども」から「大人」へと移行する過程にあり、自我が強く芽生える時期です。自分の考えや価値観を持ち始める一方で、まだそれを表現する力は未熟なため、周囲の意見や指導に敏感に反応しやすくなります。「自分のことは自分で決めたい」という欲求が高まるため、指導者の言葉を“押しつけ”と感じてしまうのです。

(2)仲間との比較と劣等感

部活動やクラブチームでは競争が激しくなり、仲間との比較による劣等感や焦りを抱きやすくなります。そうした不安や葛藤を表に出すことを恥ずかしいと感じるため、逆に無口になったり、冗談でごまかしたりと心を閉ざしてしまうケースがあります。

(3)大人への不信感

思春期の選手は、大人の言葉や態度に矛盾を感じやすくなります。「努力すれば必ず結果が出る」と言われても、実際には結果が伴わない経験をする。「全員大切」と言われても、実際には一部の選手ばかりが試合に出る。そうした経験から、大人の言葉を表面的にしか受け止めなくなり、信頼関係が揺らぎます。

2. 指導者に求められる接し方の変化

思春期の選手にとって大切なのは、「管理される存在」から「尊重される存在」へと扱いが変わることです。小学生の頃は「やりなさい」と言えば従ったかもしれません。しかし思春期には、同じ方法では逆効果になりやすいのです。

(1)一方的な指示から「対話」へ

思春期の選手は「自分の考えを聞いてほしい」という欲求を強く持っています。指導者がすべてを決めて指示するのではなく、「君はどう思う?」「どんな工夫をしたい?」と問いかけ、対話を重ねることが信頼関係を築く第一歩となります。

(2)結果よりも過程を認める

思春期は体格差や成長スピードに個人差が大きく出る時期です。結果ばかりを求めると、「どうせ自分は無理だ」と心を閉ざしてしまいます。指導者は「努力の工夫」「挑戦する姿勢」といった過程に目を向け、「よく考えてプレーしたね」「昨日より声が出ていたよ」とフィードバックすることが有効です。

(3)“弱さ”を受け止める安全基地になる

思春期の選手は、仲間には弱音を吐けず、家庭でも反抗心から本音を隠すことが増えます。だからこそ、指導者が「安心して弱さを見せられる存在」であることが大切です。「落ち込むのも当たり前だよ」「失敗しても次がある」と受け止めてあげることで、心を開きやすくなります。

(4)公平性と透明性を徹底する

思春期は「不公平」に対して非常に敏感です。試合の起用や評価に納得感がないと、すぐに指導者から心を離してしまいます。基準をあいまいにせず、「なぜこの選手を起用するのか」「どこを伸ばせば試合に出られるのか」を丁寧に説明することが、信頼を保つ鍵となります。

3. 心を閉ざした選手へのアプローチの工夫

では、すでに心を閉ざしてしまったように見える選手には、どのように接すれば良いのでしょうか。

小さな雑談から始める
いきなり練習や試合の話をするのではなく、「最近どんな音楽聴いてる?」「テストどうだった?」など、スポーツ以外の話題から心の距離を縮めます。

選択肢を与える
「AとB、どっちに挑戦してみたい?」と選択させることで、自律性を感じさせます。

“承認”を積み重ねる
褒めるのではなく「見ているよ」と伝えることも大切です。例えば「今日、一番最初に準備してくれていたね」という声かけは、選手に存在価値を感じさせます。

4. 指導者が心得ておくべきこと

思春期の選手との関わりは、時に忍耐が必要です。心を閉ざしているように見えても、本当は「わかってほしい」という気持ちを内に秘めていることが多いのです。大切なのは、急いで答えを求めず、選手のペースに合わせて関係を築いていくことです。

また、指導者自身が「子どもの頃の自分」を思い出すことも役立ちます。あの頃、親や先生にどのように接してほしかったかを思い返すことで、自然と寄り添う姿勢を持てるはずです。

思春期の選手が心を閉ざす理由 | まとめ

思春期は、選手が大人へと成長していくための大切な過程です。

心を閉ざすのは、反抗や拒絶ではなく、「自分らしさを模索するための自然な反応」とも言えます。

指導者に求められるのは、コントロールする力ではなく、尊重し、対話を重ね、安心できる場を提供する力です。選手が「ここなら自分を出せる」と感じられたとき、心を再び開き、自らの成長に向かって歩み出すでしょう。

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