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“ゲーム形式”で戦術理解を加速させる練習メニューの作り方

スポーツ指導において、選手に戦術を理解させることは非常に重要ですが、机上の説明や単調な反復練習だけでは、なかなか身につきません。

そのため近年、多くの指導者が取り入れているのが「ゲーム形式の練習」です。

これは、実際の試合に近い状況でプレーさせることで、戦術の理解を自然に深める練習方法です。

しかし、ただゲームを行うだけでは効果は限定的です。ここでは、戦術理解を加速させるためのゲーム形式練習の作り方とポイントを紹介します。

“ゲーム形式”での戦術理解

ゲーム形式練習のメリット

ゲーム形式練習は、単なる試合形式のプレーだけでなく、戦術を身につけるうえで多くのメリットがあります。

実戦感覚を養える
試合の状況に近い環境で判断することで、選手は自然と戦術の意図を体感できます。「どのタイミングでパスを出すか」「どの位置を取るか」といった判断力が、反復練習よりも早く身につきます。

集中力と判断力が高まる
ゲーム中は相手の動きや状況を瞬時に判断する必要があります。これにより、選手は戦術理解だけでなく、集中力や判断力も同時に鍛えることができます。

選手の主体性を引き出す
与えられたルールの中で、自分で判断して行動する経験は、選手の主体性を育てます。主体的に考え、動くことが、戦術を理解するうえで欠かせない要素です。

ゲーム形式練習を設計するポイント

戦術理解を加速させるためには、ただ試合をするのではなく、目的に応じたメニュー設計が重要です。以下のポイントを意識しましょう。

目的を明確にする
まず、練習の目的を明確にします。

たとえば、サッカーで「サイドチェンジの精度を高める」「プレスをかわすパス回しを身につける」といった具体的な狙いを設定します。

目的がはっきりしていないと、ゲーム形式練習はただの遊びになりかねません。

ルールで制約を設ける
特定の戦術に焦点を当てるために、ゲームに制約を設けます。

たとえば、「タッチ回数を2回以内にする」「特定のエリア内でパスを回す」といったルールです。制約があることで、選手は戦術を意識してプレーするようになります。

状況を段階的に変化させる
ゲーム形式練習は、状況を段階的に変化させることで学びを深めます。

最初は1対1や3対3の少人数で基本動作を確認し、次に全体でのゲームに拡張する、といった段階的な進め方が効果的です。段階を踏むことで、選手は無理なく戦術を理解できます。

具体的な練習メニューの例

以下は、戦術理解を目的としたゲーム形式練習の具体例です。

サッカー:ポゼッションゲーム
– 目的:ボール保持時のポジショニングとパス選択の理解
– 方法:4対4の小人数ゲームで、ボールを保持しているチームは3回以上パスを回すと得点
– ポイント:タッチ制限やエリア制限を加えることで、意図的な動きと判断を促す

バスケットボール:ハーフコート攻防練習
– 目的:スクリーンプレーのタイミングとカットの位置取り
– 方法:3対3でハーフコート内のみ使用し、特定のプレーが成立した場合のみ得点
– ポイント:プレーの成功条件を限定することで、戦術理解に焦点を当てる

ハンドボール:ゾーンディフェンスの練習
– 目的:守備陣形の連動とボール保持者への対応
– 方法:5対5でゾーンディフェンスを実施し、攻撃側は決められた人数でパスを回す
– ポイント:守備の連動ミスやパス回しの遅れを即座に指摘し、戦術理解を修正

指導者の役割

ゲーム形式練習では、指導者の声かけや観察が非常に重要です。選手が自分で判断する機会を尊重しつつ、必要な時にはポイントを整理して伝えます。

タイムアウトでの振り返り
ゲーム中のプレーを止め、意図や改善点を確認します。「なぜそのパスを選んだのか」「次はどう動くべきか」を選手自身に考えさせることが大切です。

フィードバックは具体的に
「頑張ったね」だけでなく、「ボール保持時にスペースを使えたね」「守備時に声を出せたね」と具体的な行動を認めます。成功体験と改善点を同時に伝えることで、戦術理解が深まります。

個別のフォロー
戦術理解のスピードは選手によって異なります。ゲームを観察し、理解が遅れている選手には個別に声をかけたり、簡単なミニゲームで補強することが効果的です。

“ゲーム形式”での戦術理解 | まとめ

ゲーム形式の練習は、選手に戦術を体感させ、判断力や集中力、主体性を同時に育てる強力な手法です。

ただし、目的を明確にし、ルールや状況を工夫しながら段階的に進めることが重要です。指導者は選手が主体的にプレーできる環境を整え、成功体験とフィードバックを通じて戦術理解を加速させます。

単なる「試合ごっこ」ではなく、意図的に設計されたゲーム形式練習こそが、育成年代の選手にとって最も効果的な学びの場となります。

戦術を理解し、試合で自信を持ってプレーできる選手を育てるために、ぜひ日々の練習にゲーム形式の工夫を取り入れてみてください。

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