“緊張しすぎる選手”にどう向き合うか―本番で力が出る準備法

試合になると体が硬くなり、普段通りのプレーができなくなる選手は少なくありません。
指導者や保護者としては「気にするな」「いつも通りやればいい」と声をかけたくなりますが、実はこの言葉が選手をさらに追い込んでしまうこともあります。まず理解しておきたいのは、緊張すること自体は決して悪いことではないという点です。
緊張は「失敗したくない」「期待に応えたい」という真剣さの表れであり、競技に本気で向き合っている証拠でもあります。
問題なのは、緊張によって思考が未来や結果に飛び、今この瞬間のプレーに集中できなくなることです。
目指すべきは「緊張しない選手」ではなく、「緊張した状態でも自分の役割を果たせる選手」を育てることなのです。
緊張すること自体は悪いことではない
緊張を強める正体は「結果への意識」
緊張しすぎる選手の多くは、「ミスしたらどうしよう」「負けたら怒られる」「評価が下がるかもしれない」といった結果や他人の目を強く意識しています。
この状態では脳が危険回避モードに入り、判断力や身体の動きが制限されてしまいます。つまり、緊張を和らげるためには、結果から意識を引き離す必要があります。
そこで重要になるのが、試合前に「結果以外の意識の置きどころ」を用意しておくことです。これができていないと、試合が始まった瞬間に不安が一気に膨らんでしまいます。
本番で効くのはプロセス目標
緊張対策として有効なのが、プロセス目標の設定です。プロセス目標とは、「点を取る」「勝つ」といった結果ではなく、「最初の5分は声を出す」「トラップを丁寧に行う」「守備では一歩寄せる」など、自分がコントロールできる行動に意識を向ける目標です。
試合前にこのような目標を2〜3個決めておくだけで、選手の頭の中は「評価される未来」ではなく「今やるべき行動」に向かいます。その結果、緊張が完全になくならなくても、思考と身体がプレーに戻りやすくなります。
日常練習で「失敗の意味」を変える
本番でのメンタルは、試合当日につくられるものではありません。日常の練習の中で、どのように失敗を扱われてきたかが、そのまま試合での緊張度に表れます。緊張しやすい選手ほど、過去の失敗経験を「ダメだった記憶」として強く残しています。
そのため、練習中から「ナイストライ」「今のチャレンジは良い」といった声かけを意識的に増やし、失敗=価値が下がる、という認識を少しずつ修正していくことが重要です。失敗しても受け入れられる経験の積み重ねが、本番での安心感につながります。
緊張したときの「戻り方」を用意する
もう一つ大切なのが、緊張を感じたときの対処法を事前に決めておくことです。
深呼吸をする、決まったルーティン動作を行う、短い言葉を心の中で唱えるなど、緊張した瞬間に戻るための「型」を持っておくことで、思考の暴走を防ぐことができます。
これは試合当日に突然できるものではなく、練習や練習試合の中で繰り返し試しながら、自分に合った方法を見つけていく必要があります。
試合後の関わり方が次の試合を決める
指導者や保護者が特に意識したいのが、試合後の声かけです。
結果やミスばかりを振り返るのではなく、「決めていた行動はできたか」「チャレンジできた場面はあったか」とプロセスに目を向けた対話を心がけることで、選手の中に「試合=怖いもの」という記憶が残りにくくなります。
緊張しすぎる選手は、適切な準備と関わり方次第で大きく変わります。
緊張を敵にするのではなく、成長のサインとして捉え、日常から整えていくことこそが、本番で力を発揮できる選手を育てる最短ルートなのです。