試合中に萎縮する選手を変える

試合になると萎縮してしまい、本来の力を発揮できない選手は、どのチームにも一定数存在します。

練習では技術があるのに、試合になるとミスが増えたり、消極的なプレーになったりするケースです。

こうした選手は、技術的な問題ではなく、心理的な壁に阻まれていることが少なくありません。

指導者が適切な声かけを行い、安心してプレーできる環境を整えることが、選手の成長につながります。

試合中に萎縮する選手を変える

試合中に萎縮する原因

試合中に萎縮する背景には、いくつかの心理的要因があります。

失敗への恐怖心
試合では仲間や観客、保護者の目もあり、「ミスしてはいけない」と強く意識するあまり、判断や行動が萎縮します。

自信の欠如
自分の能力に対する不安が大きい選手は、プレッシャーを感じやすく、積極的なプレーができません。

環境への適応不足
練習と試合では状況が大きく異なるため、慣れていない環境では萎縮してしまうことがあります。
たとえば、狭いピッチや観客の多いスタジアム、強豪相手の試合などが挙げられます。

心の壁を突破させるための声かけのポイント

指導者が試合中に行う声かけは、選手の心理状態を理解し、安心感を与えることが中心です。

以下のポイントを意識しましょう。

否定ではなく承認を中心に
「ミスするな」「焦るな」といった否定的な言葉は、萎縮をさらに強めてしまいます。

代わりに、「ナイスチャレンジ」「今のプレーはよく考えていたね」と行動や意図を承認する声かけを意識します。

選手は自分の行動が認められることで、心理的に安心し、次のプレーに積極的になれます。

具体的な行動に焦点を当てる
抽象的な励ましよりも、具体的なプレーや判断を褒めることが効果的です。

たとえば「もっと自信を持って」ではなく、「ボールを持ったときにスペースを見て動けていたね」と具体的に伝えます。

これにより、選手は何を改善すればよいか明確に理解でき、次の行動につなげやすくなります。

小さな成功体験を積ませる

試合中の短い時間でも、選手に成功体験を感じさせることが重要です。

たとえば、パスを成功させた、ポジション取りが良かった、声を出せた、など小さなプレーを見逃さず声かけします。

小さな成功が積み重なることで、萎縮の壁を少しずつ突破できるようになります。

プレッシャーを分散させる
試合での重圧を軽減する声かけも有効です。
「ミスしてもチームでカバーするから大丈夫」「一人で背負わなくていい」と伝えることで、選手は心理的にリラックスできます。

試合前の声かけ・準備も重要

試合中だけでなく、試合前の声かけや準備も選手の萎縮を防ぐ上で効果的です。

試合前のルーティンを確認する
ウォーミングアップやシュート練習など、選手が自信を持てるルーティンを確認しておくと、試合中も落ち着いてプレーできます。

成功体験を振り返らせる
過去の試合や練習でうまくいったプレーを思い出させ、「君はできる」という感覚を持たせます。
ポジティブな自己イメージが、試合での萎縮を防ぐ助けになります。

目標を分解する
「全試合完璧にやる」という大きな目標ではなく、「前半で2回積極的にチャレンジする」など、達成可能な小さな目標に分けます。
小さな成功を意識させることで、試合中に萎縮しにくくなります。

心理的アプローチと練習の融合

試合で萎縮する選手は、心理的なサポートだけでなく、練習での経験を通じて自信をつけることも重要です。

試合形式練習を繰り返す
少人数のゲームやミニマッチで成功体験を積ませ、実戦感覚を養います。
徐々に対戦相手や条件を変えていくことで、本番でも萎縮しにくくなります。

選手に考えさせる声かけ
「次はどう動く？」と問いかけることで、選手自身に判断させます。
自分で考えて行動できる経験は、試合での主体性を育み、萎縮の克服につながります。

チーム全体での安心感を作る
周囲の選手が声をかけたり、助け合う文化を作ることで、個々のプレッシャーが軽減されます。
チーム全体で心理的安全性を高めることも、萎縮防止の重要な要素です。

試合中に萎縮する選手を変える | まとめ

試合中に萎縮する選手の多くは、技術不足ではなく、心理的な壁に阻まれています。指導者は、否定ではなく承認を中心とした声かけ、具体的な行動に焦点を当てたフィードバック、小さな成功体験の積み重ねを意識することで、選手の心理的な安心感を作り出せます。

また、試合前の準備や目標設定、練習での成功体験の積み重ねを通じて、選手は試合で自分らしいプレーを発揮できるようになります。

萎縮する選手をただ叱るのではなく、心理的なサポートと段階的な成功体験を組み合わせて導くことが、選手の心の壁を突破させ、チーム全体の力を高める鍵となるのです。