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感情的な言動を繰り返す選手への対応

試合中に怒りを爆発させてしまう、ミスをした後に感情が乱れプレーに影響を与える、仲間や審判に強く当たってしまう……。こうした感情的な言動を繰り返す選手に、指導者としてどのように接すればよいのでしょうか。

「感情を表に出すこと=悪」と捉えるのではなく、まずはその背景にある心理を理解し、自己コントロールの力を育てることが大切です。本記事では、感情的になりやすい選手に対するアプローチの考え方と、実践的な声かけ・指導の工夫についてお伝えいたします。

怒りや焦りを力に変える、心理的アプローチ

なぜ感情が爆発してしまうのか?

子どもや若年層の選手にとって、自分の感情をうまく扱うことは簡単ではありません。

とくに競技の場面では、強いプレッシャー、他者との比較、勝敗に対する執着などが感情を大きく揺さぶります。「もっと上手くやりたい」「認められたい」「ミスしたら怒られるかもしれない」そんな不安や期待が入り混じるなかで、感情の波に飲み込まれてしまうのは自然なことです。

感情的な反応は、ある意味で「その選手が真剣である証拠」とも言えるでしょう。ですから、頭ごなしに叱責したり、「怒るな」「泣くな」と感情を押し込めるような対応をしてしまうと、選手は心を閉ざしてしまいます。

まずはその感情に対して「そう感じるのは自然なことだよ」と認める姿勢が大切です。

怒りや焦りを“否定せず、整える”

感情的な選手に必要なのは、感情を「なくす」ことではありません。

むしろ、怒りや焦りといった感情をうまく“整えていく”技術――すなわち「情動調整」の力を育てることが、競技の成長にもつながります。

たとえば、感情を言語化する練習は非常に有効です。

「いま、どんな気持ちだった?」「どんなときにイライラする?」「そのあと、どうなった?」

と問いかけてみることで、自分の内面を客観的に捉えるきっかけを与えることができます。

怒りの奥には、失敗への悔しさ、不安、自信のなさ、期待の裏切られ感など、さまざまな感情が複雑に絡み合っています。それらをひとつひとつ解いていくことで、選手自身が「怒りに飲み込まれる自分」ではなく、「怒りを使って次に活かす自分」へと変わっていけるのです。

指導者ができる“心理的安全性”の確保

感情のコントロールは、選手一人で完結するものではありません。周囲との関係性のなかでこそ、育まれるものです。とくに、指導者のかかわり方が選手の心に与える影響は非常に大きいといえます。

ミスをしたときに叱責される環境では、選手は感情を「押し殺す」か「爆発させる」かの両極端になりがちです。一方、「ミスしても大丈夫」「感情を出しても受け止めてもらえる」という安心感があると、自分の内面を冷静に見つめやすくなります。

具体的には、

感情が出た後に「どうした?何があった?」と対話の姿勢を持つ
感情の裏にある“目的”や“想い”に共感する
自分の気持ちを言葉にする“練習の場”をつくる

といった関わりが有効です。

また、「冷静に戻るルーティン」を一緒に考えておくこともおすすめです。

深呼吸、合言葉、タオルを握る、ベンチに戻って水を飲むなど、行動に“区切り”を入れることで感情の切り替えをサポートできます。

チーム全体で取り組む“感情の教育”

感情的な選手への対応は、個人に閉じた話ではありません。チーム全体で「感情との向き合い方」を共有していくことが、全体の雰囲気やパフォーマンス向上につながります。

たとえば、「うまくいかない日があってもいい」「気持ちを話しても大丈夫」といった空気を、コーチやキャプテンが率先してつくること。選手同士で、感情が高ぶった仲間に「大丈夫だよ」「切り替えていこう」と声をかけられるようになること。こうした文化が根付くことで、チームは強く、しなやかになります。

感情的な言動を繰り返す選手への対応 | まとめ

スポーツは、選手の感情が最も揺れ動く場でもあります。

そしてその感情は、正しく向き合えば、大きなエネルギーへと変換できる可能性を秘めています。

感情的な選手に「落ち着け」と言うだけでなく、その背後にある想いや背景をくみ取り、適切な“受け皿”をつくっていくこと。それこそが、選手の「自己コントロール力」を育てる、本質的な指導だと言えるでしょう。

怒りや焦りに振り回されるのではなく、それらの感情を“力”に変える。そんな成長のプロセスを、私たち指導者がそばで見守り、ともに築いていきたいものです。

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