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睡眠不足がプレーに与える影響

スポーツの世界では「努力」「継続」「練習量」が美徳とされる文化が根強くあります。確かに努力を重ねることは成長に欠かせません。

しかし、どれほど良い練習メニューを積んでも、「休養」が足りなければパフォーマンスは向上しません。

むしろ、睡眠不足が続くと集中力や判断力が低下し、ケガのリスクが高まり、最終的にはモチベーションまでも失われてしまいます。

本記事では、「睡眠」という観点から、選手の成長を支えるために指導者が押さえておきたいポイントを整理します。

練習より大切な“休養”の指導

1. 睡眠は“成長の時間”である

睡眠は単なる休息ではなく、「成長」と「回復」の時間です。

睡眠中には、成長ホルモンが分泌され、筋肉や骨の修復、免疫機能の強化が行われます。

特に成長期の選手にとっては、このホルモン分泌が身体づくりの土台になります。

夜更かしやスマートフォンの使用で睡眠時間が削られると、せっかくの練習の効果が十分に発揮されず、「頑張っているのに成果が出ない」という悪循環に陥ってしまうのです。

2. 睡眠不足がパフォーマンスに及ぼす影響

アメリカのスタンフォード大学の研究によると、睡眠時間を意識的に延ばしたバスケットボール選手は、シュート成功率やスプリントタイムが向上したと報告されています。

反対に、睡眠不足が続くと次のような悪影響が見られます。

判断スピードの低下:瞬時の判断が求められる場面での反応が遅れる。
集中力の欠如:プレーの精度が落ち、簡単なミスが増える。
感情コントロールの乱れ:イライラや不安が増し、チーム内のコミュニケーションにも悪影響。
ケガのリスク増大:疲労の蓄積により、筋肉や関節の柔軟性が低下する。

つまり、睡眠不足は単に「眠い」という問題ではなく、選手の身体・精神・判断のすべてに悪影響を与えるのです。

3. 成長期の選手に必要な睡眠時間

育成年代の選手にとって理想的な睡眠時間は「最低8時間」、できれば「9〜10時間」と言われています。特に中学生や高校生は、学校・部活動・塾などで生活リズムが乱れがちですが、成長ホルモンの分泌が最も活発になる「入眠後3時間」に深い睡眠が取れるよう、寝る時間を一定に保つことが大切です。

また、週末の試合や遠征後には、身体的にも精神的にも疲労が蓄積しています。翌日の練習を軽めにするだけでなく、「早く寝ること」を促す指導も重要です。回復を前提としたスケジュール設計こそが、長期的な育成に欠かせません。

4. スマートフォンと睡眠の関係

現代の若い選手にとって、最大の睡眠妨害要因は「スマートフォン」です。
寝る直前までSNSや動画を見ていると、ブルーライトの影響で脳が覚醒状態になり、寝つきが悪くなります。さらに、SNS上での情報刺激や人間関係のストレスが、精神的な疲労を増大させることもあります。

指導者としてできることは、「スマホを禁止する」ことではなく、「なぜ良質な睡眠が必要なのか」を伝え、選手自身が納得して行動できるよう導くことです。

例えば、

「寝る1時間前はスマホを見ない」
「充電器を寝室の外に置く」
「夜の連絡は22時までに済ませる」
といった具体的なルールをチーム全体で共有すると、自然に睡眠の質が改善されていきます。

5. “休むこと”を指導の一部にする

「頑張る」ことを評価する風土では、「休む=怠ける」という誤解が生まれやすいものです。

しかし、パフォーマンスを最大化するためには、“休む力”こそが重要です。

休養を取ることで、身体の修復はもちろん、脳の情報整理が進み、戦術理解やプレー判断もスムーズになります。特に試合後や連戦中は、選手が疲労を「感じにくい」状態にあることも多く、意識的に休みを取るよう促す必要があります。

また、指導者自身が「今日は休む日」「今はリカバリーの時間だ」と言葉にすることで、選手は安心して休むことができるようになります。休養を“サボり”ではなく“戦略的行動”として位置づけることが、育成年代の指導において極めて重要です。

6. 睡眠の質を高めるための実践ポイント

良質な睡眠を確保するには、次のような習慣づくりが効果的です。

・就寝・起床時間をできるだけ一定にする
・寝る前の食事は2時間前までに済ませる
・カフェイン(コーヒー・エナジードリンク)は夕方以降控える
・寝る直前のスマホ・テレビを避ける
・朝起きたら日光を浴び、体内リズムを整える

これらを徹底することで、睡眠の質が向上し、トレーニングの効果を最大限に引き出すことができます。

睡眠不足がプレーに与える影響 | まとめ

「練習量を増やす」よりも、「睡眠の質を高める」ほうが、選手の成長に直結することがあります。

睡眠は、筋肉・脳・精神のすべてを回復させ、次のパフォーマンスを支える“土台”です。

指導者がその重要性を理解し、選手に“休養もトレーニングの一部”だと伝えることで、チーム全体の意識は確実に変わっていきます。

努力を積み重ねることと、しっかり休むことは、どちらも「成長のための行動」です。

選手がベストな状態でグラウンドに立てるよう、指導者が「睡眠」をチームマネジメントの中心に据えることが、これからの育成現場には求められています。

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