育成年代の“疲労サイン”を見抜く―オーバートレーニングを防ぐ指導法

育成年代の指導現場では、「もっと練習すれば伸びる」「頑張れば乗り越えられる」という考え方が根強く残っています。
しかし、成長期の選手にとって過度なトレーニングは、成長を促すどころか、パフォーマンス低下や怪我、さらには競技離脱の原因になることもあります。
オーバートレーニングを防ぐためには、指導者が選手の疲労サインを正しく見抜く力を持つことが不可欠です。
育成年代の“疲労サイン”を見抜く―オーバートレーニングを防ぐ指導法
オーバートレーニングとは何か
オーバートレーニングとは、回復が追いつかない状態で負荷をかけ続けることにより、心身のバランスが崩れてしまう状態を指します。
一時的な疲れとは異なり、休息を取っても疲労感が抜けにくく、パフォーマンスが長期間低下するのが特徴です。
育成年代では、身体だけでなく精神面への影響も大きく、「やる気が出ない」「練習が楽しくない」といった変化として現れることもあります。
見逃されやすい“身体の疲労サイン”
身体的な疲労サインは、比較的わかりやすいものもあれば、見逃されやすいものもあります。
・以前より動きが重く見える
・スプリントやジャンプの回数が減る
・同じミスを繰り返す
・成長痛や違和感の訴えが増える
特に注意したいのは、「痛みはないがパフォーマンスが落ちている」状態です。これは疲労が蓄積しているサインであり、放置すると怪我につながる可能性があります。
行動や態度に現れるサインにも注意する
疲労は身体だけでなく、行動や態度にも表れます。
・返事が小さくなる
・集中力が続かない
・表情が乏しくなる
・ミス後の切り替えが遅くなる
これらは「気持ちの問題」と片付けられがちですが、実際には疲労による反応であることも少なくありません。選手の様子が普段と違うと感じたら、負荷の見直しを検討する必要があります。
成長期特有の回復の遅れを理解する
成長期の選手は、見た目以上に回復に時間がかかることがあります。骨の成長にエネルギーを使っているため、大人と同じ感覚でトレーニングを積ませると、回復が追いつきません。
また、身長が急激に伸びる時期は、筋肉や腱の柔軟性が追いつかず、疲労が抜けにくくなります。この時期に負荷をかけすぎると、怪我や慢性的な不調につながりやすくなります。
「練習量」だけでなく「質」を見る
オーバートレーニングは、単純な練習時間の長さだけで決まるものではありません。集中度の高い練習や、精神的なプレッシャーが強い環境も、大きな負荷となります。
試合や選考が続く時期、学業との両立が難しい時期などは、練習の「質」と「量」のバランスを調整することが重要です。
指導者ができる具体的な予防策
オーバートレーニングを防ぐために、指導者が意識したいポイントは以下の通りです。
・定期的に選手と対話する
・「休む理由」を肯定的に伝える
・疲労が見える選手には役割調整を行う
・チーム全体で休養の価値を共有する
「休ませる=甘やかす」ではなく、「回復させる=育てる」という考え方を持つことが大切です。
疲労に気づける指導が選手を守る
オーバートレーニングは、選手の努力不足ではなく、環境と負荷のミスマッチによって起こります。
指導者が疲労サインに気づき、早めに対応することで、多くのリスクは防ぐことができます。
選手が長く、健康に競技を続けるためには、「追い込む力」だけでなく、「止める判断力」も指導者に求められています。
疲労を見抜く視点を持つことが、真の育成につながると言えるでしょう。